歩いて14分のところにコンビニがある。学校へは自転車で通学、夏は地域でお祭り、ガソリンスタンドはコンビニから歩いて2分、お隣さんは、「イッツファイヤー!」と叫べば聞こえる距離に。 つまりそれほど田舎なわけじゃないけれどやはり民家よりは田畑の占める面積の方が大きかったし、駅は無人。夜中に眠らせまいとコーヒーのように輝くネオンサインを気にする必要もなければバイクの喧噪は遠い道で聞こえるバックミュージック。 重いチャイムを鳴らすと少ししてから奥でチャイムが鳴り響いて、どうぞーと声。誰かの訪問にも寛大だ。 「おー、!あがりなさいほらー」 小学生の頃は週に数回、中学生になってからは二週に一度ほどは会っていた祖父母に会うのが3ヶ月半ぶりな理由と私がここへ来た理由は重なっている。 失敗したな、と思ったのは4月のスケジュールを見た時だったけれど、高校生なんてそんなものだと疑わなかったけれど、周囲の目の色のかえ方と、上辺の付き合いと、隙在れば相手を引きずり下ろし進学こそすべてというその校風、嫌味な教師、全て割り切って学業に勤しむ傍らで歪んで生まれてきてしまったものに遂に耐えられなくなり一学期の終了と同時に飛び出したスニーカーよろしく、人生初の家出である。 行き先も書いてきたし家族公認だけど。夏旅行の一環だと思ってるらしいけれど。宿題ぜんぶ置いてきたんだから、私。 あんな、出店とロックンロール高校生しか出ないたいして面白くない夏祭りを耳にしながら夏季課外なんて耐えられない。自由参加なのに授業進めるって何。 私、本当はトランペット吹いて生きていきたかった、勿論そんな才能はないけれど、そうじゃなくてどこか吹奏楽部か何かで、みんなで団結してた中学時代の部活みたいな、トランペット吹きになりたかった。そうじゃなきゃ意味なかった。 だってあんなに続けたかったのに。 だから、お年玉貯金を崩してやっとの思いで買った楽器(中学三年生四月より)片手、父方の実家へ、やって来た。逃げてきた。 もうあの場所には戻らない。 編入試験だって受け直す。そのためになら…勉強もしよう。 もう耐えられないもの。 あんな閉鎖的な世界に、いられないもの。 逃避実践第一、 よーい |